成田美名子作品の最高傑作!
成田は絵もうまいけど、ストーリイテラーとして、
キャラや物語の設定・構成・展開のさせ方がうまい。
ストーリイの骨格がしっかりしているので少々脱線気味に話しをすすめても
ブレることがない。
シリアスなシーンとコミカルなシーンとのつなぎ方やバランスが絶妙で、
とてもテンポのよい運びは読者を退屈させない。
アラブ某国の石油相にして次期首長候補(最終話で首長に)を父に持つ主人公
シャール・イダニス・モルラロールを主人公に彼を取り巻く人々との顛末を描いていく。
当時、米国映画エイリアンが流行っていたこともあっての題名とは思うが、
本歌取りで見事に成田流のドラマを構築しているのはさすが。
題名にだまされてはいけません。
"エイリアン"という概念をテーマに据えて、シャールたち"エイリアン同士"は
本当の仲間になっていく。
最終話では、拉致されたシャール救出作戦の際に、切り札としてセレムが真顔で
「だいじょうぶ。これがあります」と取り出す「中国花火」、
そして花火をきっかけに「合図だ!」とのり込むジェルを中心とした仲間たち。
感動の場面だった。
最終話のこのシーンはとても印象的で、いちばん好きなシーンでもある。
シャールの生立ちは複雑で、今は亡き母親は元英国美人女優のシェリル・ドレイク。
彼は母から金髪碧眼と絶世の美貌を受け継ぐ(女の子以上に美人に化けたりする)。
そしてナイーヴな一面も...。
反首長派との権力争いなど、金髪で目立つシャールは生命の危険にさらされやすい
のもあって、舞台の中心は留学先のアメリカ西海岸。
頭脳明晰な彼は既に16歳にしてロスの大学生(スキップ)。
大富豪の子息であるシャールの邸宅には、執事以外にもいろいろな同居人や
仲間たちが集まってくる。
・執事/バトラー:シェリルの執事だったがそのままシャールに侍従。やさしく包容力あるナイスミドル。
・同居人/川原翼(女):シャールに拾われてきた。自己を探求し確立していく。
・同居人/ジェラール(通称ジェル):裏表ないストレートな性格。シャールの性格修正に彼の影響力は大きい。
シャールの家庭教師兼父の補佐(後に同居)/セレム:静かな中に強さを秘めた男。彼自身も成長し変わっていく。
ゲストキャラも含めて、その他にも魅力あるキャラクターたちが目白押し。
それぞれのキャラたちが、自分なりに成長し自分を確立していく過程が丁寧に
描かれていてとてもおもしろい。時に共感し、時に笑い、時に涙し、
読者も自分について考えさせられる物語となっている。
セレムの「迷いのある者は木の下にゆけ」など、奥の深い台詞が散りばめられている
のも魅力。
クライマックス、王位継承者として正式に名乗りを上げ王族の前に姿を表すシャール。
次代の首長を目指すシャールの力になることを、ひとりの親友としても誓うセレム。
父と同じく不偏不党のジャーナリストを目指すジェル。
自分を取り戻し家族の元へと帰る翼。
みんなバラバラになってしまうが、いつでもロスのシャール邸に集まることはできる。
普段一緒にいなくてもお互いの心の絆は出会った頃とは比べものにならないことを
再認識するシャール。
心に残る素晴らしいエンディングだった。
各エピソード(ストリート)の題名が映画の題名をパロディにしたものになっていて、
それもおもしろくて味わい深い。
現在入手できる文庫版で紹介していくと、
第1巻
1st.真夜中のカーボーイ
2st.アラビアより愛をこめて
(番外編)ロスの魔法使い
(予告編)エイリアン通り
解説:高千穂遙
第2巻
3st.夜ごとの魔女
4st.掠奪された1人の花嫁
シャール通信
解説:鈴木結女
第3巻
5st.鷹は舞いおりた
6st.親父が出てきた日
シャール通信
解説:波多野鷹
第4巻
7st.この家の鍵貸します
8st.翼よあれが郷里の灯だ
(特別編)フィリシア
シャール通信
解説:平井和正
本編のおもしろさは言うまでもないが、番外編「ロスの魔法使い」や「フィリシア」も
ハートウォーミングで素晴らしいエピソード。ウルウルしてしまう。
ぜひ一度読んでいただきたい。
現在連載中(?)の"能"の世界を描いた「花よりも花の如く」も要注目。
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