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2006年5月24日 (水)

「山月記」~孤高の虎~

いつだったか、澄んだ夜空の涼しげな月を観て「山月記」を想い出した。
中島敦の作品の中ではいちばん好きな作品だ。
「山月記」は音読すると格調高い文章を更に味わうことができる。
漢文調のリズム感ある文体は読んでいて小気味良く、詩的ですらある。

己の臆病な自尊心のために虎になってしまった李徴の姿には、
芸術家(詩人、文筆家、音楽家などあらゆる創作者)の苦悩を見ることができる。
短い物語だが、言いたいことがストレートに無駄なく凝縮された佳作であると思う。

人間の弱さをえぐリ出し描写することで、読者に自分自身を見つめさせる。
ただそれだけのものなのだが、真に心に迫ってくるものがある。
自分の弱さや短所を指摘されることはあまり気分のよいことではないが、
それを確認して受け入れることは大切であると諭されているようだ。
描写される世界の向こうに読者を引き込み、そして考えさせる、
とても純文学らしい作品だと思う。

臆病な自尊心のため、欠点の指摘を惧れて他者との交わりを断った李徴は虎になる。
人との接触を断つ、つまり社会性を失った結果、孤高の虎になってしまうのである。
人はひとりでは生きていけない、とは誰の言葉だったか?

空威張りする人、尊大に振舞う人、格好ばかり気にする人、利己的な人。
人はひとりでは弱いけれど、こういう類の人はその中でもさらに弱い人たちだ。
他者との間に壁を設け、自分の殻の中に閉じこもっていれば、
常に自分が正しい存在であることができる。しかし、それではダメだ。
客観性を得るため、他者と相互につながる(コミュニケートする)ことが必要。
その勇気を持つことで、人は強くなり、より大きな存在へと脱皮できるのだと思う。

李陵・山月記 Book 李陵・山月記

著者:中島 敦
販売元:新潮社
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